8/18火葬の後

故人の茶碗と箸を持ってきて、と葬儀屋に言われた。
無論、それだけ言われたわけではなく、あれこれ打ち合わせた話題や約束や取り決めや指示や…のうちのひとつに過ぎない。

さて、呆然と家を見回していて、その話を思い出して、台所を調べた。
我が家の箸は、たいしたものは使ってなくて、親子が使う箸もほぼ共用で、特別にどちら、とも明確には決めてない。ただなんとなく、お袋はふだん、より汚い方を使うことが多かった。
木の塗りが剥げかかって、地肌が出つつある箸だったので、これを祭壇に飾られてはみっともないぞ?、と思い、自分が使っている方を持っていった。
葬儀の後、「本来であれば土に返すべきところ、場所が無いのでいったんお返しします」と茶碗を返された。
思わず「箸はどこですか?」とたずね返すと、颯爽とした溌剌とした声で「燃やしました」と答えられた。
燃やしちゃったんだ、俺の箸…