文化と文明

文化と文明という語をどう使い分けるか。これをぼくは、あえて国語辞典を引かずに考えるのが好きなのだが、やはり中学生のころ読んだ小松左京のある短編に出てくるフレーズが、いまだに忘れられない。それは、
「文化とは、文明の中の最上のものだ」
なんてな台詞である。(原典は確か、SOS印のワイン何とかだ。本棚を探索したが見つからなかった)

つまり文明という語には、なんとなく機械文明というか、工業というか、そんなイメージがある。もっと端的にいうと、文明というのは…現代なら科学技術とか、古代なら土木も含めていいかな、そんな乾いた知識の体系である。文化は違う。文化はそこに、倫理とか、あるいは魂の伝統とか、美学とか、そんなものがくっついて初めて誕生するものである。掘り出したばかりの原油のように、文明というのは玉石混交のごった煮状態なのであるが、そんな文明が、人間の心によって愛でられるうちに、上澄みの部分がすーっと輝き初める。これはちょっとしたことで、たとえば振動とか風とかで、たちまち濁ってしまう儚いものなのだが、長い時間の間にそんなものが存在することが人間たちによって認識され、受け継がれ始める。それが文化と呼ぶべきものではないのか、と。

ただ、最近読んだり聞いたりする内容を考えると、どうも世間ではこの逆に定義され、使われているようだ。
ま、ぼくのたわ言なので、語の定義は、偉い先生に任せればいいと思うんだ。