バスを間違えた

バスを間違えた。運転手は親切なひとで、ここをまっすぐ、五差路まで戻るんだと教えてくれた。

しかしおかげで初めて、『北野あったかホール』の場所を知った。

独りぼっちで、曇った湿った空気を気にしながら、とぼとぼとまっすぐな道を進む。
傘を忘れてきた。おまけにケータイも。大げさに言えば、時間も場所もわからない、ということだ。
車も人もまばらな道沿いには、ちょっと古臭い商店や、車のディーラー、人気のないパソコン教室の看板などがある。
左足がまだ完治していない僕は、ちょっとした歩道の段差に注意しながら、ゆっくり歩けと自分に言い聞かせながら歩く。
ゆっくり歩くと、余計、左右にふらつく感じがする。

すこし、周りを見つめてみよう。自分の内面ばかりを見つめるのは疲れてきた。

正確には逆なのだ。僕は自分の内面からさえ逃げて、目前の数十センチ前をいつも見ていて、自分をすら見ていないからなぁ。

まして、周りなど!
見えるはずがない、この臆病な、ただ震えながら、何もかもから逃げているだけの、このちっぽけで弱々しい僕に、見えるはずがない。見る勇気もない。

…などと訳のわからんことを考えつつ、いつしかバス停にたどり着き、ムラウチにたどり着き、電源ユニット「剛力」400Wを購入。重いのを背負ってまた、一目散に家に戻り、PCに取り付けてみる。